1.ある食品メーカーの食中毒事件を教訓として
2.消費者契約法のポイント
3.メーカーの製造物責任(PL法)
4.金融商品販売法の規制内容
5.注意すべきIT関連取引の法律問題


注意すべきIT関連取引の法律問題
インターネットによる取引の注意点

電子商取引(Electronic Commerce: EC)は、一般にオンラインやインターネットを通じての商取引をいい、電話回線等を使用したファックス等による商取引も含まれる。最近の急速な情報化社会の発展に伴い、電子商取引の規模は急成長している。

 こうした電子商取引は、大きく分類して、@企業間電子商取引(EDI(Electronic Data Interchange) を利用した、いわゆるB to B(Business to Business)タイプの電子商取引)と、A個人向け電子商取引(インターネットを利用した、いわゆるB to C(Business to Consumer/Customer)タイプの電子商取引)」とに分類することができる。また、最近では、不特定多数消費者間の取引(オークション等)が増加しており、これはBC to C (Consumer to Consumer) タイプの個人間電子商取引と呼ばれている。

 このうち、インターネットを利用した「個人向け電子商取引」については、一企業が不特定多数の消費者を取引の相手にするものであり、取引の相手がどこの誰か分からないという大きなビジネスリスクを伴う。これには以下のような契約の成立時期・効力・当事者の認証・メッセージの同一性などに関わる多くの法律問題が発生する。

@従来の一方通行のコミュニケーションから「インターアクティブ(interactive)」な(双方向の)コミュニケーションが可能になったことから、インターネット上での契約の申込みとそれに対する承諾といった、契約の締結行為が可能となった。そこで、契約の成立時期とその効力が、従来の古典的な取引とはどのように異なり、どのような問題があるか重要となる。とくに消費者保護の観点から、売主であるサイバーショップの所有者が一方的に提示する契約条件(契約約款)の法的な効力について問題が多い。我が国では、消費者契約法により、消費者側に一方的に不利な条項を無効とすることが規定されており、サイバーショッピングにおける契約条件(契約約款)についても、この消費者契約法の規制が適用されるであろう。
A情報発信を世界中同時に不特定多数に対し瞬時に行うことが可能であるというインターネットの特質から、本人の認証や送信メッセージの公証など電子認証に関する法律問題が生じる。
B企業や個人が世界中の不特定多数の人から情報を集めることも可能であるという点から、その個人情報を企業のマーケティング・ツールとして利用する場合のプライバシーの侵害などの法的問題が生じる。いわゆる個人情報の保護の問題である。
Cそのほかに、電子著作物として法的保護を受ける電子データやソフトウエアの違法コピー、違法配布や違法利用などの問題、いわゆるビジネス方法の特許(Business method patent)の問題などが発生している。

 このようにインターネットに関する法律問題は数も多く存在するが、インターネットの普及に伴い、電子商取引がビジネスにおいて重要な地位を占めているのは異論のないところであろう。これからは、IT関連の業務に携わるビジネスマンは法律知識を修得し、法的トラブルを回避する技術も必須のアイテムとなることは間違いない。

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金融商品販売法の規制内容
〜金融商品販売業者等の販売上の留意点〜  
 金融ビッグバンによる規制緩和によって金融商品が多様化・複雑化し、消費者の商品知識や理解力の向上がこれに伴わないため、金融取引をめぐるトラブルが増加しており、銀行法、保険業法等の業態別規制だけでは効果に限界が生じていた。そこで、さまざまな業者が取り扱う金融商品を横断的にとりあげ対象として金融取引の当事者間における私法的な権利義務関係を規制することによって、消費者保護をはかる目的で、「金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法)」が制定され、昨年4月から施行された。本法は、不法行為による損害賠償責任のルールを金融取引において明確化したものであり、民法の特別法として各業法を補完し、適用する関係にある。

 本法の対象となる金融商品は、預金、信託、保険、証券、商品投資、先物取引等、幅広く網羅的に列挙されている(2条)。これらの金融商品を販売する者、すなわち金融商品の販売、代理、媒介行為を業として行う者が金融商品販売業者等であり、銀行、信託銀行、信用金庫、証券会社、保険会社(その代理店)、リース会社、クレジット会社等が該当する。

 金融商品販売業者等は、金融商品の販売を行おうとするときは、次の重要事項について説明しなければならない(3条)。

@当該金融商品の販売について金利、通貨の価格、有価証券市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨および当該指標(市場リスク)
A当該金融商品の販売について当該金融商品の販売を行う者その他の者の業務または財産の状況の変化を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨およびその者(販売業者等)の信用リスク
B当該金融商品の販売対象である権利を行使・解除できる期間の制限等があるときは、その旨(ワラント、各種デリバティブ商品等)

 金融商品販売業者等が重要事項の説明をしなかった場合には、これによって顧客に生じた損害を賠償する責任を負う(4条)。この責任は、不法行為責任であり、使用者責任を介さない業者自体の直接責任であり、無過失責任である。また、元本欠損額が賠償責任額であると推定されているため(5条)、これを争う場合には金融商品販売業者等に立証責任がある点で顧客保護の効果がある。
 また、金融商品販売業者等は、次の事項を織り込んだ勧誘方針を策定し、これを店頭に掲示するか、閲覧に供さなければならない(8条)。

@勧誘対象者の知識、経験、財産状況に照らし配慮すべき事項
A勧誘の方法、時間帯に関して勧誘対象者に配慮すべき事項
Bその他の勧誘の適正確保に関する事項
 すなわち、業者に対して、顧客の知識、経験等の特性に会わせた勧誘と一方的で強引な販売方法の抑制を自主的に指向させるところに特徴がある。

 事業者サイドとしては、消費者とのトラブルによって生じるさまざまな損害の発生を事前に回避するため、以上のような金融商品販売法の法的知識の修得は不可欠である。
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メーカーの製造物責任(PL法)
輸入業者・小売店も要注意

製造物責任法(PL法)によれば、製品に安全性を欠く「欠陥」があり、その欠陥が原因で製品を利 用した人がケガなどの損害を受けた場合(拡大損害)、メーカーは、無過失の損害賠償責任を負う ことになる。一般にある人が他人に対し損害賠償責任を負うのは、その人の行為に過失がある場合 に限るのが民法の原則なので、製造物責任は非常に厳しい責任であるといえる。

例えば、Aさんが、オートバイ(二輪車)に乗って、自宅から勤務先に向かっていたところ、突然前輪 がはずれ大けがを負ったとする。この事故の直接の原因は、運転中に前輪の着脱装置であるレバ ーが解除状熊になっており、しかも前輪が脱落するのを防ぐ安全装置も取り付けされていなかったこ とが判明したらどうであろうか。

この場合、脱落防止装置が装着されていなかったことは、「欠陥」とみなされ、前輪を止めているレ バーが走行中の振動等で解除状態になることはあり得ることであるし、そういう状熊が起きることは オートバイの製造業者なら想定できるはずだから、メーカーは製造物責任を問われ、Aさんへの損 害賠償を命じられることになる。

この責任を負わないためには、製品の製造業者は、予想される事態に備え製品に十分な安全対策 を施しておく必要がある。

さらに、利用者が、製品本来とは異なる不適切な方法で使用したことにより、事故が起こる場合もあ る。不適切な使用をさせないためには、製品に、その旨の警告をし、警告をわかりやすく表示をして おく必要がある。具体的には、正しい使用方法、使用可能年限、適切な保管方法等につき取扱説 明書で十分な指示や警告を行うことである。この警告・表示が不十分な場合、それ自体が「欠陥」 にあたるとしてメーカーに製造物責任が課せられることがある。

製品を自ら製造していない小売店も製造物責任法で賠償責任を負う場合がある。例えば、購入し た材料を加工して調理した食品として販売している場合には、その加工食品の「製造業者」として 責任を負う。また、外国製品を直接外国から輸入して販売している場合も、輪入業者として製造業 者と同じ責任を負う。前者の場合には、販売店の衛生管理に気をつけ、購入した材料の安全性を 十分確かめるとともに、万一の場合に備えて材料の仕入先と損害負担に関する契約を結んでおくこ とが必要である。後者の場合も、海外の業者と損害負担に関し輸入契約の中で取り決めておくこと が重要である。

また、万一事故が起こった場合に備えて、生産物賠償責任保険に加入することも大切である。

製造物責任を負わないようにするための対策は以上のとおりであるが、事業者サイドとしては、一 般消費者とのトラブルによって生じるさまざまな損害の発生を事前に回避するため、法的知識の修 得が不可欠であるといえる。

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消費者契約法のポイント
事業者としてどのような点に留意する必要があるのか

私人間の取引は、当事者の対等な関係を前提としているが、個人消費者と事業者間の契約においては事業者側に情報や交渉力が集中しているため、民法の上記原則を貫くと実質的な公平性が担保できない。そこで、各種の個別(業)法が制定され、それぞれの分野における消費者保護が図られてきたが、個別法は原則として特定分野の取引にのみ適用されるため、すべての消費者を保護する観点から民法の原則を修正する広範な適用範囲をもつ特別法の制定が待たれていた。このような背景のもと、消費者契約法が平成13年4月1日より施行された。

この法律は個人消費者と事業者との間で締結される(消費者)契約に適用され、消費者を誤解させたり、困惑させたりする方法により締結された契約について取消権を与え、消費者に一方的に不利な契約条項を無効とすることが規定されている。

ここで、無効とされる契約条項は以下のとおりである。
@ 事業者側の債務不履行時における消費者側に生じた損害の全部または一部を免除する条項
A 事業者側の行為によって消費者に損害が生じた場合、その損害の全部または一部を免除する条項
B 民法570条・民法634条所定の事業者の責任を免除する条項
C 金銭債務の弁済義務を消費者が負担する契約において年利14.6%を超える部分(但し、貸付金については利息制限法が優先適用される)
D 民法商法その他の法令で消費者に与えられている権利を制限または義務を過重する特約で信義則に反するもの

また、本法では消費者が事業の行為を通じて消費者の意思表示に瑕疵をもたらすような不適切な勧誘行為を類型化し、それらの該当行為を取り消せるものとした(4条)。 消費者が取り消すことができる不適切な勧誘行為は以下のとおりである。
@ 契約の重要事項に関する不実告知
A 契約における不確実事項についての断定的判断の提供
B 重要事項の利益部分のみを告知し、不利益事実を不告知とすること
C 勧誘に際し、消費者側の退去の求めに応じなかった場合

以上の行為に対して、消費者が契約を取り消すと、契約は遡及的に無効となり、消費者・事業者の双方に原状回復義務が発生する。さらに、この取消権の行使は追認が可能となった時から6ヶ月、契約締結時から5年間は行使可能となっているが、取消の効果は善意の第三者には対抗できないこととなっている点に留意すべきである。

以上が、消費者契約法の概要であるが、消費者保護の観点から今後消費者契約を批判する目がさらに厳しくなっていくことは間違いないであろう。そこで、事業者側としては、消費者とのトラブルによって生じるさまざまな損害の発生を事前に回避するため、コンプライアンス(法令遵守)を重視することが肝要である。

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ある食品メーカーの食中毒事件を教訓として

業界トップの食品メーカーが起こした食中毒事件は、消費者に対する損害はいうまでもありませんが、企業自体の存立が危ぶまれるほどの損害が発生しています。この食品メーカーの立場からみた損害として挙げられるのは、次の4項目があります。

●操業停止・中止・免許等の取消しなど、行政処分による製造・販売不能による損害
●消費者からの不法行為・PL責任に基づく膨大な損害賠償請求による損害
●業務上過失致死傷等による刑事処分を受ける可能性と、警察・検察庁からの捜索・押収・役職員等に対する取調などの負担
●消費者による製品購入ボイコットなどの社会的制裁を受けることの損害

この事件では、社長のマスコミへの対応の拙劣さばかりが報じられましたが、事件の本質は別な所にあります。食品会社として最も基本的な食品衛生に関する法令の理解と、これを実践するコンプライアンス(適法な企業活動)に欠けていたことが事件を引き起こした最大の原因です。またいったん法律を犯した場合に、いかに法的・社会的ペナルティが厳しいものであるかという認識の欠如も、事態の悪化を招きました。
この事件は製造現場である工場で発生しました。企業としての管理体制は、形式上では整っていたはずです。しかし現実に第一線で働く社員が、安全や食品衛生に関する各種法令を充分に理解し実践していたとは言えず、事件は必然的に起こったのです。
現場の事故発生を未然に防ぐは、コーポレートガバナンス(公正な企業経営)による自浄作用を有効に機能させなければなりません。具体的な手段としては、第一線の社員への製造や取引に関する法律知識(法律上の責任と違反行為へのペナルティーなどの知識)の周知・徹底が必要です。こうした知識に基づくモラルがあってこそ、はじめてマニュアルも生き、管理体制も機能し、さらに不測の事態に社員が自らの力で対応できるのです。
この事件は決して他人事ではありません。どこの企業でも起こり得ます。この事件を「他山の石」として、改めて自社の内部管理体制を見直す必要があります。

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